コロナ禍におけるエンタメ界の救世主「鬼滅の刃」企業コラボ分析

鬼滅の刃がもたらした経済効果

2020年、エンタメ業界はコロナウィルスによって大きな影響を被った。そんな逆境の中でも、国内における歴代興収新記録を達成し、多くの経済効果を生み出した「鬼滅の刃」はまさにエンタメ界の救世主というべき存在。これまでに大きな経済効果を生み出したヱヴァンゲリヲンやONE PIECEなどのアニメ映画と比較しても、それを大幅に上回る経済効果があったことがわかる。本コラムにおいては、鬼滅の刃とタイアップ企業が生み出したコラボレーションの『成功ポイント』を分析していく。

※参照元:DIAMOND online

経済活動の先行きが不透明な中、人気作品に多くの企業が相乗りしていく構図は、今世紀になり年々強まってきている。こういった話題作品とタイアップするためには、かなり事前の段階からコンテンツ側と調整を行なっていく必要がある。タイアップを行なう際には、人気作品を感知する感度、スピード力・情報力、そして何よりも思い切って決断をする能力が求められているといえる

目次

事例①鬼滅の刃×極楽湯・RAKU SPA〜休息セヨ!炭治郎たちの極楽な休日

ここからは事例を交えて、どのようなコラボが効果的だったかを解説していく。まずはスパ施設を運営する極楽湯の事例をご紹介。

※参照元:極楽湯プレスリリースより

極楽湯はこの案件が初めてのキャラクターコラボで、大きな挑戦を伴った施策だった。内容は非常に面白いもので、3か月間という異例の長さでプロジェクトを展開。具体的には、コラボレーションした飲食メニューの開発や、スパ事業という業態ならではのオリジナルグッズ(手ぬぐい)やコラボ風呂などの仕掛けを通じて、鬼滅の刃の世界観を再現。

twitterでトレンド入りするなど大きな反響を呼び、株価も20%高を記録するなど極楽湯のブランディングや売上に大きく貢献する取り組みとなった。

極楽湯コラボのGOODポイント

成功のキーになったのは描きおろしのビジュアル。これはファンの動きが変動する重要な部分となる。描きおろしにどのキャラクターを起用するか、どんな服装やポーズ、表情をしているとファンの方が喜ぶのか、という点をこだわって検討したことが見て取れる内容となっている。

2つめのポイントは、来場者が繰り返し楽しめる施策を設けること。前後半で来場特典を変更したり、来場タイミングによってコラボ風呂などの体験できるものを変えていくことを意識した設計になっている。来場促進は販促施策の基本的な施策だが、これによって来場者収入やグッズ売上の拡大にもつながった。

最後のポイントは、来場者の満足度をいかに高められるかという点。今回の施策では、「世界観をいかに醸成できるか」という部分が非常に大事な部分。入口の前から館内の装飾、そして着用する館内着に至るまで、鬼滅の刃の世界をびっしりと体現したことが満足度を高め、来場者からの口コミ発信を誘発した。

※参照元:極楽湯プレスリリースより

これだけでも素晴らしい施策だが、更に付け加えさせていただくと、展開時期が7月から9月までのタイミングだったため(鬼滅の刃の人気を先どった感はあるが)、映画公開に伴ってファンの増加や熱量が更に加速したので、映画公開の時期(10月中旬)に合わせて第二弾の展開などができれば更によい効果が期待できたのではないかと推測される。

事例②鬼滅の刃×築地銀だこ

続いての事例はそのユニークな景品が大きな反響を呼び、販促に結び付いた築地銀だこの施策をご紹介。

※参照元:築地銀だこ WEBサイトより

展開内容はコラボメニューや、コラボグッズの通販、家族向け商品へのべた付けノベルティ、抽選プレゼントキャンペーンなど。公式発表によると、この「鬼滅の刃」コラボが後押しし、売上が9か月ぶりに前年同月比100%超を記録したとのこと。まさに外食産業の大殺界ともいうべき本年において、前年を超えるのは驚異的であり、鬼滅の刃がもたらす販売促進力を示したものであるといえる。

銀だこコラボのGOODポイント

このコラボの良かった点を挙げるとファミリー向けの団らんパックで幅広い層を狙い、絵柄がつながって3枚で1枚の絵が完成するノベルティを通じて、複数回購買を促した点が単純明快ではあるものの素晴らしい施策と言える。作品特性である「老若男女に人気があるコンテンツ」という側面を踏まえて事前準備していたことが伺えるが、ポイントはこの施策を映画公開前の9月に実施できたというところ。今でこそ、小学生含め全世代で人気な同作だが、原作がジャンプ作品だったこともあり、初期からのファン層はもう少し違った層が中心だった。映画での公開前にこういった点を予測できたのは素晴らしい着眼点だったと言える。

※参照元:銀だこプレスリリースより

その他、抽選キャンペーンで「1名だけにあたる特別な商品」を用意したことが、(そのプレミア感から)twitterを中心としたSNSで大きな盛り上がりを見せていた。1名だけということで予算を多くかけたわけではないと推測されるが、費用対効果の面でもまさにアイデア勝ちと言える施策である。さらにグッズをECサイトで販売した点についても、このコロナ禍での施策として見逃せないポイントだ。

これだけでも素晴らしいものだが、店舗と連携したSNS施策(例えば商品画像を投稿して何かがあたるキャンペーンなど)があれば、もう少しO2O(オフラインtoオンライン)という観点でも幅を広げられたのではと推測する。

事例③鬼滅の刃×ダイドーブレンド

続いての事例は誰もが知っているダイドーブレンドコーヒーの鬼滅缶シリーズ。3週間で5,000万本を販売、販売本数前期比1.5倍を記録したと報道された

※参照元:ダイドー WEBサイトより

ダイドーの事例は、連日報道されていたので記憶にある方も多いかと考えられる。外食産業で最初に話題となったのは「くら寿司×鬼滅コラボ」で、くら寿司の国内最高売上を達成するなど、多くのお客を店舗誘引した施策となっている。それに負けず劣らず!というのがこのダイドーCP。展開としては28種類のコラボパッケージに声優のボイスがついたり、プレミアムキャンペーンを実施したりといった形のスタンダードなものだが、それぞれにファン心をくすぐる取り組みがなされている。

ダイドーコラボのGOODポイント

良かった点は、まずは28種類の豊富なバリエーション展開とTVCMでの訴求があったことで、店頭の棚どりが非常にうまくできており、結果としてそれが大きな売上につながっていたこと。コンビニチェーンごとにもらえるノベルティや特典が変更になっていたり、かなり上手にケアをされていたという印象だ。

次に、人気声優の活用も大きなポイント。単純に使うのではなく28種類すべてのバリエーションに違ったボイスがつくというのはファンにとって堪らないもの。これがファンの購買欲求を刺激したのは間違いない。

※参照元:ダイドープレスリリースより

最後のポイントは、ダイドーの決断力。28種類もキャラクター展開があるということは、当然「人気のないキャラクター」も含まれることになるが、そのリスクを踏まえても28種類での展開にこだわった点が今回の成功ポイントであると言える。

これだけでも素晴らしいものですが、惜しいところは描き起こしの絵がなかったという点。※もちろん何か事情があって実施できなかった可能性もあり。これだけ人気の作品になると多くのブランドとコラボをする為、既視感のないものをどれだけ出していけるかというのが大きなポイント。オリジナルのものがあれば更に成功していたことが想像される。

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