推しって?沼って?今ドキ消費を後押しする沼化ジャンルを解説

去る11月4日、Twitterはある話題で盛り上がりました。皆さんは、11月4日が何の日かご存じですか…??

正解は「いい(11)推し(04)」の日。日本記念日協会にも認定された正式な記念日のこの日は、多くの人が自分の「推し」についてSNSなどで発信します。
さて、ここ数年よく耳にする「推し」や「沼(にハマる)」という言葉。かつてはオタク用語として一部の熱狂的なファンの間で語られるだけでしたが、最近では「推し」のためにお金をかける「推し消費」がマーケティング施策のひとつにもなっています。
アニメやキャラクターとのコラボ企画も、この「推し消費」との関係は切っても切れないもの。今回の記事では、今注目の「推し」の基礎知識や、よくある「沼化」ジャンルについて紹介します。

目次

「推し」とは?

「推し」とは、ジャンルを問わず「応援したい」人やキャラクター、コンテンツなどを挙げること。「推しが〇〇して…」などと名詞的に使うときは、その応援する人・キャラクター・コンテンツそのものを表す言葉としても使われます。
その起源は、AKB48などのアイドルグループが「総選挙」と呼ばれるファンからの人気投票で順位を争っていた2010年ころから、熱狂的なファンの間で「〇〇ちゃん推し」などと言われていたことと言われています。それが次第に一般化し、Z世代(10代後半~20代)の若者を中心に多くの人がそれぞれの「推し」を持つ時代になってきています。
「推し」のために情報収集をしたり、イベントに参加したり、グッズを買ったりすることは「推し活」と呼ばれ、熱狂的なファンは大好きな「推し」のためなら労力もお金もいとわないという傾向があります
TwitterやInstagramなどのSNSでは、日々「#推ししか勝たん(推しが一番の意味)」「#推しが尊い」などの投稿があふれ、アイドル、アニメ、ゲーム、マンガ、ミュージシャン、俳優など、ありとあらゆるジャンルの「推し」について熱い想いが語られています。いまや100人いれば100通りの「推し」がいることが当たり前になってきています

▼TIPS
フジテレビ系木曜劇場で21年7月~9月に放送されたドラマは「推しの王子様」。恋愛ドラマのテーマになるほど、「推し」の概念は一般化してきています。
ドラマ「推しの王子様」 公式サイト

「沼(にハマる)」とは?

一方、「沼にハマる」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
この言葉も「推し」とおなじく、もともとオタク的な熱烈な趣味を持つ人の間で使われてきた用語で、まるで沼に足を取られるように、趣味や好きなモノにどっぷりのめりこむ、没頭する様子を表しています
「沼にハマる」ことは「沼(ぬま)る」「沼にひきずりこまれる」などと表現され、ハマるジャンルのことは「〇〇沼(例:声優沼)」などと言われることもあります。
この「沼化」しやすいジャンルも「推し」と同様に幅広く存在します。ただ、「推し」が特定の人・キャラ・コンテンツに使われることが多いのに対し、「沼」はもう少し広い、ジャンル全体に夢中になることを指すことが多いと思われます。そのため「〇〇沼」にはアウトドアやグルメなど、趣味的なジャンルも含まれます。いずれにしても、ハマってしまった人は対象のジャンルに多くの時間とお金をかける傾向があります

▼TIPS
NHK Eテレでは「沼にハマってきいてみた」を10代~の若者に向けて2018年から放送中。沼対象の多彩なジャンルが紹介されています。
NHK Eテレ「沼にハマってきいてみた」公式Twitter

よくある推し&沼化ジャンル8選

では「推し」や「沼」の対象になるジャンルには、どんなものがあるのでしょうか?
人によってハマる対象は本当にさまざまなため、すべてを挙げることはできませんが、熱烈なファン数が多いジャンルをピックアップしてご紹介します。

●アイドル

ジャニーズ、LDH、坂道アイドル、K-POPなど、もっとも「推し」が語られやすいのがこのジャンルです。熱烈なファンは全国各地で開催されるコンサートやイベントに参戦。グッズをたくさん購入し、「推し」に貢献したいと思っています。グループ内の特定の1人ではなく、グループ全体を応援することは「箱推し(はこおし)」と言います。

●アニメ

もともとオタク文化を醸成してきたアニメも「推し」の対象になりやすいジャンルです。ファンは、アニメ作品のなかのキャラクターの誕生日をお祝いしたり、グッズを購入したりすることで応援しています。ほしいグッズをコンプリートするため、ついついお金をかけてしまうという人も多いです。

●ゲーム

個性豊かなイケメンキャラクターが多数登場する女性向けゲーム(乙女ゲーム、恋愛シミュレーションゲーム)や、アイドルなどのかわいい女性キャラが登場する男性向けゲーム、動画サイトやSNS上で情報が拡散されやすいオンラインゲームなどのジャンルで熱狂的なファンが生まれています。

●声優

アニメ、ゲーム人気に伴い、キャラクターの声を演じる声優さん自体にハマるファンも増えています。声優さん個人の人気が拡大したことで、アニメ化されていないボイスドラマCDや声優音楽ユニットのCDなどもたくさんリリースされています。また、朗読劇などの声優イベントも多く開催されています。

●舞台

古くは宝塚やミュージカルなどの歌劇も熱烈なファン層を生み出すコンテンツでしたが、近年ではマンガ、アニメ、ゲームのストーリーを舞台化した「2.5次元ミュージカル」が人気です。舞台を見に行くことで「生で会える」感覚が、出演する若手俳優を応援するファンを夢中にしています。

●YouTuber・ライバー・インフルエンサー

動画配信やライブ配信を専門として活動するインフルエンサーが人気を集めているほか、アイドルがライブ配信をすることでファンと交流を図っている場合もあります。ライブ配信では、ファンは「投げ銭」と言われるプレゼントを購入することで「推し」を応援しています

●テーマパーク

この項目以下はどちらかというと「推し」というより「沼」化しやすいといえる趣味的なジャンルです。テーマパークカテゴリには「ディズニーオタ」「USJオタ」などがあり、年間パスポートを購入して頻繁にパークに通ったり、グッズを集めたり、パーク内で撮った写真をSNSで共有したりして活動しています。

●アウトドア・キャンプ

近年人気が高まるアウトドア・キャンプ分野も、「ついつい道具に投資したくなる」「SNSでシェアしやすい」などの理由からハマる人が出やすいジャンルです。

推し消費を意識した商品・キャンペーン事例

最近では、推し消費を意識したマーケティング施策や商品をリリースする事例も増えています。
その内容は、「推し」対象となるコンテンツとコラボしたキャンペーンから、「推し活」を応援する商品、トレンドワードとしてキャッチコピーに「推し」を使った企画までさまざま。皆さんもぜひ「推し キャンペーン」でGoogle画像検索をしてみてください。推し市場のにぎわいが感じられると思います。

●フェリシモ:推し色グッズ

最近のコンテンツ戦略として、グループのアイドルや登場人物がたくさん登場するアニメ・ゲームなどは、それぞれの個性を表す「担当色」が割り当てられていることが一般的です。
そんな担当色をバッグやアクセサリーを身に付けたいという推し活女子のために複数の推し色がラインナップされた雑貨が販売されています。
>参考リンク:フェリシモ OSYAIRO【おしゃいろ】

引用:OSYAIRO おしゃいろ♡フェリシモオタ活部 (@osyairo)

池袋パルコ「推し活しか勝たん」キャンペーン

池袋パルコは21年8月、『推し活しか勝たん』キャンペーンと題した期間限定キャンペーンを行いました。“アイドルオタクアイドル”こと「末吉9太郎(CUBERS)」さんをキャンペーンモデルに起用し、「推し活」に便利なグッズや「推し」のカラーのアイテム、「推し」へのプレゼントを対象にキャンペーンを展開。館内には「推し」への愛をぶつける特設メッセージボードが設置されました。
>参考リンク:池袋PARCO「推し活しか勝たん」 キャンペーンサイト

引用:推し活しか勝たん |池袋PARCO

リプトン×「IDOLiSH7」キャンペーン

森永乳業・リプトンは、アプリゲームで人気となった「IDOLiSH7(アイドリッシュセブン)」のキャラクターをブランドアンバサダーに起用したコラボパッケージ、キャンペーンを展開しました。各キャラクターの描き下ろし画像がデザインされたパッケージは、ファン層の「集めたい」を刺激し、売り切れが続出するほどとなりました。
>参考リンク:森永乳業株式会社ニュースリリース「リプトン」×「IDOLiSH7」のコラボパッケージが登場!

引用:アイドリッシュセブン公式|IDOLiSH7が「リプトン」ブランドアンバサダーに就任!

酒ガチャ(KURAND)×「アイドルマスター SideM-」コラボ商品

日本酒を中心としたお酒の通販サイト「KURAND」の人気企画「酒ガチャ」と、「アイドルマスター」シリーズの男性アイドルプロデュースゲーム「アイドルマスター SideM-」がコラボした「コラボ酒ガチャ」が販売されました。「酒ガチャ」は知らないお酒との出会いを楽しむべく、ランダムにセレクトされた詰め合わせボックスで、ふだんお酒を飲まない人もこのコラボをきっかけにいろいろなお酒と出会えた!との声も。公式サイトの口コミでは、ファンからの「コラボありがとう」の声があふれていました。
>参考リンク:KURAND(クランド)コラボ酒ガチャスパークリング-アイドルマスター SIDE M-

引用: KURAND(クランド)コラボ酒ガチャスパークリング-アイドルマスター SIDE M-

推し消費者の声・口コミ

上記のようにアニメやキャラクターとコラボしたキャンペーンは、「推し」のためにグッズや商品を買うファン層の購買意欲も刺激しています。
Twitterでは、コラボ商品の購入報告とともに「コラボしてくれてありがとう」などのファンからの感謝のメッセージが多く投稿されています。

引用:りつは@sweet_aiur
引用:小町@komekmc
引用:やゆた@u_ane3
引用:にっこにコ@sumikko25nico

このように、応援するために買う・参加することを普及した「推し」「沼」文化は、企業のマーケティング、プロモーション企画においても見逃せないキーワードとなっています。
ご紹介したように、どのようなジャンルやコンテンツに熱いファン層がいるのか、どんな企画であればファン層が喜ぶのかということを見極めながら、マーケティング・プロモーションの企画に活かしてみてください。

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